ハルじいさんの著作権コラム  -   ← シリーズ1へ     |    【 シリーズ2 】


   【14】 JASRACというところ 〜 なぜ、あるんだろう  [2008/5/22]

前回はお金とは直接関係ない話で、退屈だったかも。 でも、大事な話だった、すぐに役立つわけではないけれどね… お金の話に戻そう。 そうすると、著作権では、どうしてもJASRACを避けて通るわけにはいかない。 e-licenseとか「第2JASRAC」なんて言われてるものも出てきたけど、やっぱり一番大きいのはJASRAC。 聞いたことはあるだろうけど、実際にはどんなことをしてるところなんだろうか。

インターネットで「JASRAC」を検索してみると、さすがに初めは「まともな」本当のJASRACとJASRACの関連サイトが出てくるけれど、それ以降は悪口だらけ。 すごいものがた〜〜くさんある。どうやらよく思ってない人たちがた〜くさんいるようだ。 JASRACというのは一言で言っちゃうと 「音楽の著作権から発生するお金を、一括してお金を集めて(徴収)、分配するところ」 のこと。 コラムの12で言ったように、著作権はいろんなところからお金がもらえる。 そのすべてに、いちいち「お金ください」というのはいかにも面倒。 だから著作権を持ってる人の代わりに、それをしようというところ。

それから、これもコラム12で言ったように、

 「使わせて」 →
 「いいよ。でもこれだけ払って」 →
 「うん、解った、払うね」

をいちいちやるのは、音楽出版社にとっても面倒だし、とても手間が掛かる。 だったらそういうことを一括してやってくれるところがあったら便利。 実際、世界各国では(まともに著作権使用料が徴集され、支払われている国では)JASRACのような組織が必ずある。

ではJASRAC、あるのが当然で、あると便利、だけなのだろうか。例えばCDのようなブツからの印税。CDの場合は原盤印税が付きもの。 だから原盤印税と一緒に著作権使用料ももらっちゃった方が簡単だよね。アメリカやイギリスではその方が普通。 もっとも本来の原盤を使わずに著作権だけ利用しようという場合もあるから、そうすると「使っていいよ」という件数が増え、手間が掛かるかもしれない。

そう考えるとJASRACを通すと簡単、便利。 でも何でもかんでも 「使わせて」と言ってきたら「はい(、お金を払ってくれたら)OK!!」 となる。 本当は使ってほしくないところでも、JASRACにはそんなこと解らないからね。 またJASRACは、印税率(CDの場合は価格の6%)はすべて同じになる。 ヒットしてるものでも、まるで知られてないものでもみんな一緒。自由に決めることはできない。

そう、JASRACに任せると簡単、便利だけど、自由が利かないんだ。自分で管理すれば自由だけど処理が大変。 反対にJASRACに任せると自由にできない。同じ価格で同じ曲数なら1曲当たりは同じ金額。 100万枚売れてるCDでも、3,000枚しか売れてないCDでも、その中に入っている1曲10円と同じでいいのだろうか (ごくごく個人的な意見では、100枚売れてるのだから、1曲当たりは少なくてもいい気がする… でも、そんなこといったら、みんなに嫌われるけどね)。

ところがJASRACに任せると値段(≒印税率)を変えることはできない。 でも海外的に見ても、1曲ごとに値段を変えるというのは行われていない(JASRACみたいなところを通さなければ、もちろん話は別)。 事務処理が煩雑になる、というのが大きな理由だろう。 また「ある程度売れたら(=著作権使用料の支払がこれこれになったら)」としたとしても、厳密にできるかどうか。 もちろんJASRACは厳密を期するだろうが、外からはよく解らないよね。もっともよく解ったら、それこそ「個人情報保護法」違反になってしまうでしょう。

で、その他の問題もあるので、それは次回に。

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   【15】 JASRACの問題点(はあるのだろうか?)  [2008/5/29]

JASRACという組織はとっても便利、だから権利を持ってる人にも、 権利を使いたい人にも(どちらかというと、使いたい人の方が便利)みんなに利用される。 けれどもその反面、自由が利かないということはあった。 前回お話した「自由に印税額を決められない」というのが一つ。また自由が利かないという点でいうと、 JASRACは申請があれば(使用料を支払うことを前提に)みんな許諾を出してしまうということがある。 権利者が使ってほしくない人にも使わせてしまうのだ。

別にグダグダ言わずに使わせればいいじゃない。お金になるんだから」と思うかもしれない。普通はそう。 ただ、そうは言っていられない場合もある。 以前著作隣接権の保護期間が30年だった頃、「懐かしのポップス」みたいなタイトルでCD10枚組8,000円なんてのが通販で売られたりしていた。 その中に例えばビートルズの曲が収録されたりしてたんだ。なんかいいよね。買いたくなっちゃう。 しかもこれ、ちゃんとJASRACの許諾を得ている。海賊盤でもなんでもない。

著作権の保護期間は終了していない、だからJASRACに申請する。 けれども著作隣接権(原盤と言っていい)の保護期間は終了している、だからレコード会社の許諾なしにCDを作ってしまう… こういうわけだったんだ。 著作権は合法でも、原盤は非合法(=海賊盤)というヘンなことが起こった。 こんなことをされたら正規のCDを発売しているレコード会社はたまったもんじゃない。

そこでJASRACとレコード会社の話し合いの結果、曲目リストを提出して、その該当曲の使用申請が出たらJASRACはレコード会社に連絡するというルールができた。 レコード会社は、そういう連絡が来たら当然「使ってはいけません」とか、「使ったら法的手段に訴えます」とかで、使用させないことができる。 で、ようやく収まった。JASRACが強制的に許諾してしまう=JASRACに預けると自由が利かない、一例だった。 (この話、残念ながら映画の世界では、まだ存在する。)

JASRACがよくやり玉に上がることに「ブランケット方式」がある。CDなどと違って、例えばカラオケはいつどの曲が歌われるのか解らない。 だからあらかじめ金額を決めて、その使用料さえ払ってくれれば、何をどのように使ってもかまいませんよ、とするわけ。 そうすると実際にどの曲が使われたか解らないので、それはJASRACの方で(サンプル調査するなどして)決めましょうというシステム。 これ自体は、お互いの手間も省けるので問題がないだろう。

でも「ほとんど使われないカラオケシステムからお金を取る必要があるのか」とか、 「サンプル調査で本当にちゃんとお金が支払われるのか」といった疑問が出てくる。もちろんJASRACはちゃんとやってくれている。 音楽業界、権利を持っている人たちにとっては周知の事実だ。JASRACを信頼している。それは本当。 (というか、この点を信頼できなければ、JASRACに預けられないけどね…) けれどもお金を取られる方からすると「ホントにちゃんとやってるの?」という疑問が付きまとう。

どうもJASRACに批判的な人たちには、そうとらえられているのではないか。JASRACがいただくお金は税金などとはちょっと違う。 著作権を使用する際の対価だ。けれども、表立って批判しない人にも「うるさいから払っておこう」的な考え方があるのかもしれない。 「これこれの曲を使ったのだから、いくらいくら払ってください」ではないところに不信感というか、疑問があるのではないだろうか。

繰り返して言うが、JASRACはちゃんとやっている。けれども常日頃からJASRACとお付き合いをしている人でなければ、その実態がよく解らない。 それに「払ってくれ」という根拠も見えづらい (「決まってるんだから、払いなさい」と高圧的に出る職員がいないことは、固く信じている。 もしそんな職員が一人でもいたら、これは大問題だ)。 我々からすると、JASRACはちゃんと「説明責任」を果たしていると思う。

けれども、そう感じない人が一人でもいたら、きちんと説明するべきだろう。 かといって、JASRACが一方的に悪いなどというつもりはさらさらない。JASRACは話をしようとしているのだから、彼らの言い分にも耳を傾けるべき。 せっかく(若い人を中心に)著作権があるということ、著作権というものの認識が深まっているのだから、お互いに歩み寄る姿勢がもっとあるべきだろう。

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   【16】 プロダクションはなぜあるんだろう  [2008/6/9]

プロダクションという言葉は聞いたことがあると思う。人によって「事務所」なんても言う。 プロダクションと事務所、どこが違うんだろう。中身としては同じ。 ただ、何となくプロダクションという言葉を使うのは、老舗(から枝分かれしたところ)が多いよう。 歌手とかタレントとかいう呼び方とワンセット。演歌歌手の所属は間違いなくプロダクションだ。 反対に事務所は比較的新しいところが使っているよう。ロックバンドの所属はたいていそう。 アーティストという呼び方とワンセット。もちろん例外も多いけど。

言葉はともかく、このプロダクションは一体何をするところだろうか。 「マネージャーという人がいて、アーティストのマネジメントをする」ところ。 その通りなんだが、ではマネジメントとは一体なんだろうか。今の若いマネージャー(=マネジメントする人)は スケジュールブッキングそして現場の立会いだと思ってる人が多い。 それも大事かもしれない(現場の立会いは要らないけど…  ただ現場にいるだけでボケーっとしてるくらいなら、スケジュールを取りに動いていた方が、 よほどアーティストのためになる)。

けれどもほんとに大切なことは、アーティストのために役に立つことをする、ことだ。 アーティストのプロモーションといっていい。 プロモーションというとレコード会社がすぐに思い浮かぶが、 レコード会社のプロモーションは、厳密に言うとCDのプロモーション。 極端なことを言えば、アーティストが有名だろうが有名でなかろうが、CDさえ売れればいい。 もちろんアーティストが有名になればCDの売り上げも上がるはずなので、そこでアーティストのプロモーションもする。 協賛金を出してライブをさせる(その協賛金は宣伝費)のも、CDの売り上げを伸ばすためなんだ。

これに対して、プロダクションの行うプロモーションは、純粋にアーティストのプロモーション。 アーティストの名を売り、アーティストの仕事を増やす(=ギャラを稼ぐ)ことが目的のプロモーションだ。 そうするとこれまた極端なことを言えば、CDが売れようが売れまいが仕事さえ取れればいい、ということになる。 現実的には、音楽をやってるアーティストの場合、CDが売れることが一番のプロモーションなので、 レコード会社の邪魔をしてまでプロモーションすることはない。

そう、レコード会社は人も多い(というか、おカネも多い)から全国的に宣伝しようとなったら、レコード会社に任せることになる。 だからプロダクションとして宣伝をするといっても、地道に足で稼ぐとか、全国展開では手の回らないすき間を埋めていくことになる。 そして実際には、プロモーションしつつ仕事を取る(=スケジュールを埋める)ことがメインになる。

でも本当に大切な仕事は、アーティストのプロデュースだ。プロデュース、この言葉もよく聞くよね、でもよく意味が解らない。 一言で言えば「(文字通り)アーティストを創り出す」こと。 見掛けだけでなく内面も、創り出す音楽も含めアーティストをより多く売るための仕事一切合財だ。 CDとして売り出すのにどんな曲をやるか、どういう音作りをするか、ということもプロデュースには違いないが、 厳密に言えばこれはサウンドプロデュース。 そうではなくて、アーティストの見せ方、プロモーション、スケジュールブッキング(、もちろん音作りも) というすべてを取り扱うのがプロダクションのやるプロデュースだ。

と、こんなことが契約とどういう関係があるのだろうか。 それについては次回(最近前後半が多い、一話完結にしないと←独り言でした…)

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   【17】 プロダクションの一番大事な仕事(!?)  [2008/6/19]

プロダクションの仕事はアーティストのプロデュース… っていうか、なぜ私のような人間がそんな話をするのだろう。 音楽業界での契約の話をしているはずなのに… そう思われた方も多いだろう。 けれどもプロダクションと契約は切っても切れない間柄。それはなぜか? アーティストがいるから。 アーティストのプロデュースをするのがプロダクションの仕事だから。

アーティストのプロデュースといっても色々な仕事があった。 「アーティストを作る」ことは大事な仕事の一つだが、「アーティストをプロモーションする」ことも大事。 で、プロモーションで一番手っ取り早いのは「CDを出す」ことだよね。 確かにCDを出さないでライブ一本で勝負!! なんてのもありえるけれど、CDを出した方が色んな人に聴いてもらえるから有利だし簡単だよね。

でも、ただCDを出せばいいわけじゃない。そのCDが売れなければしょうがない。 売れるようにするためには「CDのプロモーション」が必要になる。 そう考えると大きなレコード会社(メージャー)の方が有利。 全国展開してくれるから、それからお金の面(=宣伝費)で。 またメージャーと契約すれば色々金銭的に入ってくるものが多い。 印税率は変わらないものの、印税の前払い(前渡金)や契約金や(CDのプロモーションになるので)ライブの協賛金や… という具合。

そうするとどのレコード会社がそうしたことをしてくれるかの見極めが必要になる。 よりいい条件で「契約」するためには売込みが必要になる。 (もちろんアーティストにレコード会社が乗ってくれるような魅力がなければダメだけどね…)大事なのは

 まず売ってくれる体制にあるか
 次に条件はいいか
 そしてお金がより多く入るか

といったところ。こうしたことを頭に入れながら、レコード会社と話をするわけ。 で、どこかのレコード会社が乗ってくれ(契約してくれ)たら、プロダクションの仕事は、極端なことを言えば半分終わりとも言える。

プロダクションの仕事はマネジメント、それはスケジュールブッキングと(新たな仕事を発掘するための)プロモーション。 でもCDが売れれば、そういったことは、こちらから積極的に動かなくても向こうからやってくる。 そのためにも「売ってくれる」レコード会社を探し当てるのが一番大きな仕事となるわけ。

ただここで大事な注意点。レコード会社を選定する優先順位を間違えちゃいけない。 さっき上げた三つ目「お金がより多く入るか」を最重要視してしまうと本末転倒になってしまう。 その辺のさじ加減がちゃんとできるかどうか… 実はこれ、とても難しい。 だって「契約金5,000万円出すよ」と言われたら「!!!」になっちゃうよね。 5,000万円あればプロダクションはだいぶ羽振りよくできる。社長だってベンツは夢じゃない!!?  でも、そこをぐっとこらえてちゃんと売ってくれるレコード会社を見極めることができれば、 アーティストに「もっとプロモーションしてくださいよ、ちゃんと仕事してくださいよ」と言われる筋合いはない。

ただし、プロダクションだって、その社長だって、現場のマネージャーだってボランティアでやってるわけじゃない。 お金も当然必要、それも多いほどいいのは当たり前。では、その辺の兼ね合いはどうしたらいいんだろう…

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