

契約の大切さはしつこくしつこく、繰り返し繰り返し言ってきたつもりだ。
ならば
契約さえすればいいのだろうか。
中身をよく見ないで契約してしまってもいいのだろうか。
これによって、下手をすると一生を、少なくとも音楽をやっていく上でのすべてを決められてしまうかもしれない。
慎重に読まなければならない。それだけでなく、たいていの人は契約書を見ることは初めてだろう。
よく見ないで、読まないで契約していいはずがない。
見なくてもあまり差し支えのない契約書もあることはある。たとえば1回目に言った部屋を借りる契約。
私の場合もそうだったが標準書式(印刷したもの)があって、そこに名前、住所とかを書き込んだものを使っていた。
こうしたものなら、さらっと斜め読みする程度でいいかもしれない。
なぜなら、みんなが使っているものだから…
「赤信号、みんなで渡れば怖くない」というギャグをツービートのたけし(ビートたけし、北野武)さんが昔言っていた通り。
ただ本当は、赤信号だろうが青信号だろうが、みんなで渡ろうが一人で渡ろうが、道路を横断する時は一人ひとりが注意しなければいけないんだけどね。
これと違って標準書式のいいところは「もしまずい点があったら、誰かが指摘している」から。
まずい点があっても、誰かが直しているので今は正しくなっている(だろう、たぶん…)からだ。
ところが音楽業界の契約なんて、あることは話に聞いていても見たことはない。
そんなものを斜め読みでいいはずがない。まして、いきなり初めて見る契約書にハンコを押していいはずがない。
そこで契約書を出されたら、その場で読むのではなく「
持って帰ってゆっくり読ませてください」とでも言おう、仮に読まないとしても…
いやいや、読まなければならない。
さて、ゆっくり読んだところで解るものなのだろうか。
確かに日本語で書いてある文章なのだから、読んでも言葉や中身が解らないということはないはずだ。
けれども
契約書特有の言葉とか言い回しがある。時には、普通の使い方と違う場合もある。
たとえば「~とみなす(看做す)」という言葉がある。
この言葉は、普通なら「~と考える」とか「~と思って差し支えない」という意味だが、
法律の中では「~である、だ」つまりそのものだという断定的な意味で使われる。
まあこういう言葉は、音楽業界の契約書では(私の経験上)あまり出てこないだろうが、出てきたら注意しなければならない。
それよりも厄介なのは、
一体何が言いたいのか、がよく解らないことだろう。
あなたは「自分の演奏を録音したものに基づいてCDができるから、それが売れたらお金をもらえるという内容なんでしょ!?」と思っていらっしゃるだろう。
それはそれで、正しい。だが契約書を読んでも、そう理解できるようには書いていない。
それなら、自分の親や兄姉にそして先輩に読んでもらおう、信頼できる目上の人に。ただ残念ながら状況はあまり変わらないだろう。
やっぱり解らないと思う。だってそういう人たちだって、
契約書を読むのは初めてだから。ではどうしたらいいんだろう?
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